鹿児島の美容室から

鹿児島市荒田「美容室かわなべ」のブログ

ペットボトルの少年

びっくりしました。

 

 

この世界は本当に僕をびっくりさせるものに溢れています。

 

 

 

昨日の夕刻、とある田舎町を散歩していました。

 

途中、橋の上で立ち止まり真下に流れる小川をぼんやり眺めてたんです。

 

これまで生きてきた日々のこと、これから続いていくであろう日々のこと、

 

毛髪の断面のこと(美容師として)、

白髪染めの薬剤のこと(美容師だし)、

カットしてもどうしても髪がハネてしまう物理的な原因のこと(毛のことばっかやん!)、

もろもろに思いを馳せていると…

 

 

チャポンッ……チャポンッ……

 

 

隣で音がしたのでそちらを見ると、小5か6年生くらいの男の子がひとり川に何かを投げ込みました。

 

 

そしてそれを手に持ったヒモでまた手元に引き揚げています。

 

要するに、ヒモでつないだ何かを川に投げ入れては引き揚げて、それを繰り返している様子でした。

 

 

ん?なんだろう?と思い、思わず声をかけました。

 

 

 

「こんにちわ!ここ、何か釣れるの?」

 

少年は答えました。

 

 

「あ、いや、これただの砂入ったペットボトルです」

 

 

えええええぁぁああぁああああ!!!???

 

 

 

 

 

 

 

いやー、びっくりしすぎて、橋から落ちそうになりました。 

 

 

何を釣るわけじゃなし、

 

彼はただ、ヒモでつないだ砂の入ったペットボトルを川に投げては引き揚げるという遊びをしていたんです。(なんて名前の遊び?)

 

 

 

繰り返しになりますが、僕は本当にびっくりしてしまいました。

 

 

だって、

 

 

 

 

絶対面白くないですよね?

 

 

 

はいスマホがなりました。

画面にはいつも仲良くしてる友人の名前。

おっ?ちょうど暇なときにナイスッ!

 

 

「あ、もしもし?どうした〜?」

 

「おー!これからさ、ヒモでつないだペットボトルを川に投げては引き揚げる作業を繰り返しに行くけど、お前もどうかなって!」

 

 

絶対行かないでしょ?

いつも仲良い友達でも、この誘いに限ってはすぐ断るでしょ?

 

Instagramで動画上がってても、いいね!押さないレベルでしょ?

義理いいね!も押さないレベル。

 

 

 

どうりで散歩中に見つけた彼は、ひとりでやっていましたもんね。

 

 

 

そしてまた、どうして彼はそんなことをしようと思ったのかも、興味深いところではあります。

 

 

魚つりごっこにしては、釣り竿らしきものを持ってなかったですし…。

 

多分、おうちの宗教上の理由にほぼ間違いないとは思うのですが…。

 

 

 

 

ふと、僕の頭の中に方丈記の冒頭がよぎりました。

 

 

ゆく河の流れは絶えずして、

しかももとの水にあらず。

よどみに浮かぶうたかたは、

かつ消えかつ結びて

久しくとどまりたるためしなし。

 

鴨長明方丈記」より〜

 

 

現代語訳すると 

 

川ってずーっと流れて止まらないのに、

同じ水じゃないよね〜。

水面見てると、泡がポコッとできたかとおもった次の瞬間にはパンッて弾けてすぐなくなっちゃうよね〜。

泡、オツ〜。

 

〜訳 かわなべ〜

 

 

鴨長明は川の流れを見て、こんな事を描写しつつ人の世もこんな風だよなぁなんて無常に浸りっていた様子です。

 

しかしもし、鴨長明の隣にも、ペットボトルを川に投げ入れる彼がいたら、方丈記は違ったものになったかもしれませんよね。

 

 

 

ペットボトルの彼の横顔は真剣そのものでした。

真剣に、ただ楽しんでいました。

 

 

大人になると、なんかこう、日々の暮らしの中で、

こんな事をしてなんの意味になるんだろう?とか、

こんなの時間の無駄じゃないか?

自分のやるべき事はもっと他にあるんじゃないだろうか?

とか、漠然とした不安感や焦燥感にとらわれたり、行動やモノゴトにいちいち意味づけを必要としてしまいがちではないでしょうか。

 

 

僕はいま、ペットボトルの彼に偉大なる教えを受けた気がしています。

 

 

彼の声が僕の耳元でこう言っています。

 

「おいそこの大人!

人生に意味とか無いし、いちいち考えんな!

俺を見てみろ!

ペットボトルを川に投げ入れて引き揚げてるだけだぜ?

これのどこに意味があるよ?

そんなもん初めから終わりまでねーよ!

でも子供だったときのお前なら、隣で一緒に楽しんでくれたと思うけどな!

まぁ、つまんねー大人にはなるんじゃねーぞ!」

 

 

 

よし。

 

 

今度の休み、ペットボトルに砂を入れて近所の川に行ってみよう。